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偽薬(プラシーボ効果)とは

こんにちは。この記事をお読みの方で実際に効果はないけれど、「なんとなく」効果を実感したという方はいませんか?

今回は、その心理的メカニズムに焦点を当てて説明していきます。必ずしもこれが正解というわけではありませんので一説としてご一読いただけると幸いです。

認知が歪んでしまう心理

心理学用語に「偽薬」と呼ばれる専門用語があります。

ただのビタミン剤を「これを飲めば集中できるよ」と言われてから飲むと、実際に作業に集中できたと効果を実感するケースなどが偽薬効果に当てはまります。実際に効果があったのかは別として、そのような効果を実感するのは暗示によるものとされています。

方法論の知りすぎはよくない?

偽薬効果を前提にすると、方法論は知りすぎもいけないのだと考えられます。というのも、数多くのビジネス本からインプットしたノウハウを実践し効果を得ようとしても、偽薬効果の心理的メカニズムによってあまり効果が実感できないのではと考えられるからです。(こういうと本の虫の方から怒られてしまいそうです汗)

たくさんの情報が入手できる現在は、自分に適切な情報のインプットとアウトプットが望ましいでしょう。そのため得る情報も現在の自分のステージに合わせた情報収集がよいかと思います。

逆偽薬効果もある

偽薬効果とは対照的に、逆偽薬効果というものも存在します。ストームズ(Storms,M.D)とニスベット(Nisbett,R.E)が1970年に発表した逆偽薬効果の実験があります。

不眠症の大学生に向けて、乳糖を使用して1群は「興奮す作用がある」と前もって教えおきます。続いてもう1群には「鎮静作用がある」という話をしておきます。定められた期間は大学生がその乳糖を飲んで、効果のほどを確認という実験です。

この結果から「興奮作用がある」と前もって教えられた群のほうが、睡眠の質が高かったと指摘されています。偽薬効果だけで考えるならこれってとても興味深い実験結果ですよね。

「サブリミナルマインド」の著者、下条信輔(しもじょう しんすけ)さんによると、眠る原因を(興奮すると言われた)錠剤に100%押し付けられたため、結果として睡眠の質が向上したのではと述べています。

これに対して、「鎮静作用がある」があると言われた群は、眠る原因をどこにも押し付けられなかったため睡眠の質は相対的によろしくなかったというわけです。

誤解を恐れずに言うのであれば「興奮作用がある」と言われた群は、錠剤をのむことで眠ることは困難なのだろうと期待値が下がったと考えられます。

錠剤をのむことで興奮してしまう。結果眠ることは困難、という心理が眠るための期待を下げたおかげで結果的に睡眠の質を向上させたと考えられます。

後知恵バイアス

偽薬効果と関連させて、後知恵バイアスには気を付けておきたいところです。後知恵とは、予想できる内容と結果が一致した場合「やっぱりね」「知っていました」などのように予測や判断に対する過信の原因と言われています。

僕の経験談

僕の経験上では、心療内科に通っていた時期に、専門医とお話しても心が晴れるような気持になれませんでした。そのとき臨床のスキルを通して患者さんをリードするという、心理士の業務の流れを知っていたため「心療内科に通って心理的に落ち着く」という期待を自分のなかで下げてしまったものと過去を振り返って思います。

一方で、心理分野との縁がない方とお話しすると、とても楽しく話ができた印象があります。もしかすると、心療内科で話すことや気もちの緩和などの効果をあらかじめ知っていたため、それが後知恵バイアスに繋がったのではと考えています。

期待値はあくまで1つの要因ですので、すべてにいえることではありません。けれども、実際に心理士と知識があると心理士とお話してもケアしづらくなってしまうのかな?と思いました。

まとめ

僕たちの判断や推論は決して完璧ではありません。時として心理的メカニズムが効果を妨げてしまうこともあるでしょう。

偽薬効果・逆偽薬効果・後知恵バイアスで説明したように、自分の心理的メカニズムが関係してズレた結果にならないよう注意が必要ですね。

——参考にした書籍・サイト——

  • サブリミナルマインド 潜在的人間観のゆくえ(著:下条信輔 1996年初版 2009年13版 発行:中央公論新社):アマゾン
  • 心理学辞典(編:中島義明 2010年 有斐閣 p.11:後知恵):アマゾン